2005年2月4日(金)の日記


椎間板ヘルニアはなおせません、しかし痛みはとれます
院長記

カイロプラクティックでは頚椎あるいは腰椎の椎間板ヘルニアは禁忌であるらしい。というのは、教えるカイロ大学によって、その基準が異なるようなのだ。また、代替医療の推進者と言われている人の中にも、カイロプラクティックはヘルニアは治療してはならない、という御仁もいる。

まず、厳密に問題を立てると、椎間板ヘルニアとは解剖学的、構造学的な病理的所見である。とくに、MRIの画像診断によって確定される。カイロプラクティックの陣営ではヘルニアに対して、Dr.Coxが独自の治療技術を編み出して、ヘルニアに効果があると主張している。あるいは、理学療法士のマッケンジーの編み出したマッケンジー法がヘルニアのリハビリに良いとされている。

いずれにしても、構造学的アプローチである。突出あるいは脱出したものを元の位置に戻す治療法である。

しかし、この病理的所見が具体的な症状と関連があるのかないのか、この点についての厳密な議論はほとんどない。ヘルニアがあれば、上下肢に放散痛があるに決まっている、という前提に立っているからだ。

しかし、この前提は確認されていない。たとえば、左上肢に痛みのある患者さんのMRIを撮ったら、C6/7の頚椎ヘルニアが認められた。しかし、その頚椎ヘルニアがいつのものか、画像を診断する医師に特定することはまずできない。1年前のものか、5年前のものか、ごく最近のものか。毎年毎年定期的に撮っておれば、いつのものか特定できるだろう。しかし、そんな経済的に無駄なことはできない。


いつのものか特定できないヘルニアで特定の時期に発症した痛みとの関連を結びつけること自体が無謀である。実際に、いくつかの海外文献を読むと、何の症状もない健常者のMRIを見ると、退行変性、突出、脱出、脊柱管狭窄などが認められ、その程度は加齢に比例している。しかし、むしろ放散痛の発症は高齢者には少ない。それよりなにより、健常者にもMRIでヘルニアが認められる以上、MRIは確定診断の決め手になり得ないのである。

高価なおもちゃである。

むしろ、具体的な上下肢痛という症状は椎間板ヘルニアとは無関係である、と考えたほうが真実に近い。

したがって、脱出したヘルニアを元に戻そうとする無駄な努力はいらない、むしろそれは過剰な負荷を患者に与えて、却って症状を悪くする。

問題はヘルニアではない。身体の機能障害とくに、神経系と血液循環系の障害による、神経の過剰興奮が問題なのである。したがって、カイロプラクティックはヘルニアは治せません、しかし、痛みはとれます、ということになる。

No.464


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